【この田んぼをどうしようか。】
1996年、それまで耕作してくれていた人が「もう耕作できなくなったから。」と田
んぼの返却を申し出られた。いまさら僕が田んぼを耕作しようにも、やる気があった
としても知識も経験も、そして機材もない。当然田んぼとして耕作を続けることは無
理と判断した。
親父や妻と相談して、土盛りして畑にでもしようかということになり、300坪の畑
地が出現した。今から10年前のことである。(その後、隣接する田んぼの交換とかが
あって、現在では550坪あまりの畑及び果樹園になっているが。)
【果樹園をするぞと宣言】
しかしながら、僕は勤め人であり、毎日のこまめな管理が必要な畑作はとうてい
無理である。では何なら可能か、考えた末に思いついたのが果樹である。これなら
土日だけの管理でも何とかなるかもしれない。そう考えて誕生したのが、我が家の
果樹園である。
ちょうど40歳を迎えた年の年賀状に、これから果樹園をする、いつか皆様をご招
待するので、その日を気長に待っていてくださいと宣言、果樹園構想をご披露した
のである。
【手当たり次第、思いつくまま、植えてはみたけれど】
それまで土を触ったこともない(手が汚れるのが嫌い、爪の間に泥が入るなんて
考えられなかった!)僕が、果樹園をと考えても、さて何がこの土地に合うのか、判
るはずもなく、ハウツー本を片手に模索が始まった。とにかく、ホームセンターや通
販で販売している果樹の苗木を片っ端から購入。植えつけて様子をみることにした。
柿、栗、梅、桃、梨、プラム、ゆすら梅、ざくろ、グミ、さくらんぼ、柚子、キウイ、たら
の芽など、深い考えもせずどんどん植えつけていった。その植えた苗木の中にあっ
たのがブルーベリーである。
【いくつかの幸運が重なって】
当時はとにかく、土地や気候に合うか、合わないかを知るためであり、勉強(下
調べ)もせずに植えつけていたため、酸性土壌を必要とするとか、それにはピート
モスが最適であるとか、受粉のためには同系2種類が必要であるとか、そんな知識
は全くなかった。
そんな僕にとって幸運だったのは、品種や特性も知らずに購入したブルーベリ
ーが頑健なホームベルで、しかも2年生苗木で丈夫であったこと。また植えつけた
場所が偶然砂地であったこと。そして不思議なことにホームベル1本なのに受粉、
結実したことである。
【ブルーベリーが突然実をつけた!!】
他の果樹は年月とともに大きくなり、収穫できるようになっていく中、ブルーベリ
ーは枯れもせず、さりとてそんなに大きく生長することもなく、年月を重ねていっ
た。それが突然、2004年夏、実をつけたのである!植えつけて8年、10年生になって
いたホームベルが、初めてしかも大量に結実したのである!!
施肥もせず、剪定もせず、ピートモスを投与することもなく、もちろん潅水もせず、
ほったらかしにしておいたにもかかわらず、結実したのである。果実数は多いが、
なんの世話もしていないから粒は小さく、種や皮も舌に触ったが、でも甘かった。
美味しかった。。。
【ブルーベリー狂いが始まった。】
人間とは現金なもので、果実を見ると世話に力が入る。それから僕のブルーベリ
ー狂いが始まった。どうも僕はもう一方の趣味である純白レース鳩の項でも書いて
いるように、「熱しやすく冷めにくい」性格のようである。
2004年秋から翌年秋までの1年間に、実に70種以上、本数にすると120本を超え
るブルーベリーの鉢が我が家の庭に並んだのである。家族から呆れかえられたの
はもちろんである。手に入れた先は、県内のホームセンターはもとより、旅行に
いく先々でのホームセンターめぐり、そして、もちろん苗木業者、BB愛好家か
らの購入といったあらゆる手段を使っての入手であった。
【想像以上に大変な鉢植えの管理】
120を超える鉢植えへの水やりは、簡単なようだが、想像以上に大変な
作業である。水道ホースでの潅水ではあるが、夏場の出勤前と帰宅後の朝・夕
毎日2度の水やりは、なかなか骨の折れる仕事である。
こんな作業を何年も続けることは絶対できないと思い、思い切って2005年
秋に、20本ほどを実験的に露地植えしてみた。雪がかなり積もる当地の冬へ
の対応は可能かどうか。そういったことも見てみたかった。
【管理・潅水の省力化に向けて】
120鉢以上に潅水することが、夏場の潅水が如何に大変か、1年間の鉢植え
管理で十分身にしみた。朝早起きして、水遣りを済ませて出勤しても、帰宅した
ら新梢が萎れてしまっている。そんなことがどれだけあったか。
この潅水の省力化こそが、ブルーベリー管理の省力化のつながる問題であると
考えている。それを解決するためには、露地植えしかない。その露地植えという
栽培方法を陰で支える手段が松皮バークと針葉樹チップによるマルチであると考
えている。
保水性、保温性、保湿性の確保、団粒化構造の保全、コガネムシの防御、酸性
土壌の維持等に対してその効果が期待される。
【大雪を乗り越えて】
運悪く、露地植えした2005年から2006年にかけては、当地はもちろん、
全国的にも大雪の年であり、数本に雪の重みでの枝折れの被害はあったが、耐寒
性、耐雪性については特に問題ないことが証明された。そこで、2006年春に新
たに60本余り、ハイブッシュ系・ラビットアイ系合わせて80本余りの、主に
3年生の苗木を露地植えしたところである。
後述しているマルチの効果か、露地植えが良かったのか、結実させているもの
も新梢を伸ばすなど順調に生長を続けており、来年にはかなり収穫できるのでは
ないかと期待している。
【マルチに強力な協力者が。】
当初はもみ殻で行っていたマルチであるが、強い風が吹くと飛ばされたりする
し、もっと何かいい方法はないものかと模索・思案する毎日であった。そんなあ
る日、レース鳩の放鳩訓練に出かけた海王丸パークの近所にチップ工場があり、
松の木の皮や古いチップが大量に野積みされているのを見かけた。
果たして、ブルーベリーに使えるかどうか、効果があるのかどうか、判断がつ
かないまま工場に飛び込み、話をさせてもらったところ、非常に気さくなご一家
で、BBによるまちおこしの草分け的存在である「柳田村」へもチップを運搬し
たことがあるとかで、一気に話が進んだ。
僕は不勉強で、この工場で生産されたチップが何に使われるのか、針葉樹と広
葉樹のチップは用途が違うのか、価格はどうなのかなど、木材チップのことを何
も知らなかった訳だが、親切に一つ一つ教えてくれ、欲しいなら無料であげる。
自分で運べないなら、ダンプで配達してあげるとまで言っていただいた。ちなみ
に、この工場で生産されたチップは、長野県に運ばれ、きのこ栽培の床材として
使用されるのだそうだ。
【チップのお母さん、助けて。】
いくら配達してあげると相手が言ってくれたからと、すぐに好意に甘える訳に
はいかないと、意地っ張りの僕は、自分でスコップを使い袋詰し、10袋を軽四
自動車でBBゾーンに運び込んだのだが、最後の袋を搬入した時、持病のぎっく
り腰が再発した。果樹園で身動きできなくなり、なんとか帰宅したものの翌日の
仕事を休んだ。
「人の好意は素直に受けるもの」と心から反省した僕は、翌週、チップ工場の
奥さん(チップのお母さんと、僕は勝手に呼んでいる)に配達をお願いしたのは
言うまでもない。
【ある日、チップの山ができた!】
2006年春、暖かくなり、きのこの需要が一段落した春の日、我が家の休耕
田に、ダンプで3台分の松皮バークと針葉樹チップの山が出現した。旦那さんの
運転でチップのお母さんが、本当に無料で配達に来てくれたのである。果樹園ま
ではダンプが入らないため、休耕田に積み上げてもらったが、ここからは人力で
搬入しなければならない。
おかげで松皮と針葉樹チップは使い切れないほどあることから、株回りだけで
なく、植付け全面のマルチを目標に、8月中旬になっても、いまだに自転車で搬
入作業を続けているところである。
【松皮バークと針葉樹チップによるマルチの状況】
松皮も完全に腐れば(分解)肥料(実際にバーク肥が販売されている。)で
あるが、僕がもらったのは肥料にするにはまだ数年の月日がかかりそうというも
のである。湿気があるとヌルヌルしているが、乾くとかさかさでパリパリの感じ
になる、本当に松の樹皮。
これに針葉樹チップが適当にというか、混じっている部分もある、そういった
代物である。分解して肥料化する期待は当分しない方がいいかなと思っている。
これを各株元にたっぷりとマルチし、樹間は畝として、列間は面としてマルチ
している。保水性、保温性、保湿性の確保のため、最終的に10pを超える量ま
で増量していきたいと、毎週土日になると運搬作業を続けているのである。
【防鳥ネットを張ってみた】
7月に収穫期を迎えたハイブッシュ系は、その半分以上をヒヨドリなどの野鳥
に食べられてしまった。生長が多少遅れても収穫して家族を喜ばせてみたいと
考えていたのに、大半を食べられ怒った僕は、妻に手伝ってもらい、せめてラビ
ットアイ系の果実は夏に帰省する娘のためにと、防鳥ネットを設置した。周囲30
m余りを防風ネットで囲み、天井に防鳥ネットを張ったのである。さすがにこれで
はヒヨ君たちも手が出ないようで、僕は収穫を独り占めしている。
防鳥ネットの良いところは、完全に熟すまで樹上に置いておける点である。特
にラビットアイ系は完熟させると一段と美味しいことから、防鳥ネットがあると安
心して待てるのである。
【みんなの笑顔を見るために】
ここ2年ほどの間に、東京、千葉、新潟などにいる僕や妻の甥っ子、姪っ子、
そして大阪にいる僕たち夫婦の長女と、次々と6人も結婚し、続々と赤ちゃんが
誕生している。将来、その子たちが大きくなり、夏休みにこちら(富山県)に帰省
した時に、自然にふれあうことができれば、あるいは収穫の喜びを体験することが
できればいいんじゃないかな。
また、保育士である妻や娘の担任の子どもたちをブルーベリーの摘み取りに招待
してあげることができればいいんじゃないかな、と僕の夢はどんどん大きく広がっ
ていく。
ブルーベリーが順調に生長し、果樹園全体の収穫が増えて、みんなをご招待でき
るようになったら、それをみんなが喜んでくれたら、次の段階として考えているの
は、宿泊施設の整備である。
何年先か判らないが、僕や妻が退職して、朝から晩まで時間が使えるようになっ
たら、活動拠点としての宿泊施設ができたらと思っている。
【ログハウスがほしいな】
果樹園にマッチした建物というと、やはりログハウスであろうと家族の意見は
一致した。つい先日、お隣の市までログハウスのモデルハウス展示棟を見学に出か
けて来た。これは住宅として建設したものであり、延床40坪のあまりの立派さに、
妻と末娘は感動とともに自分の部屋はここと勝手に決めていた。
建設費は坪単価60万円と通常の住宅よりはるかに割高であり、しかも水回り
工事費は別途とのことから、そんなに簡単に建てようと決心できるものではないが、
欲しい物は手に入れないと気がすまない、我慢が出来ない性質の僕は、多分、無理
しても近いうちに建てるであろうと、冷静でケチなもう一人の僕は予想している。